先日、最終回が放送された「シュタインズゲート ゼロ」。
結論から言うと、無印ファンにとってこの上なく贅沢な原作補完でした。
最高の後付け、と言ってもいいでしょう。シュタゲの名に恥じない、綿密なシナリオでした。感動した。
今回はその感動をレビューする記事ですので、バリバリにネタバレを含みます。
「えっまだ観てないんだけどテレビ放送終わっちゃったの?出身地は?年収は?彼女はいる?」と思った方は一旦落ち着いてください。
テレビ放送は無情にも終わってしまいましたが、普通にアマゾンプライムで全話見れます。
というか僕もアマプラで全部見ました。登録初月は無料なので、1ヵ月以内に全部見てしまうのをお勧めします。
最近歳を食ったせいか毎週アニメを追う気力が続かないので、一度開いたら勝手に次の回が流れて一気見できるシステムが地味に助かりました。画質もいいしね。
以下、ネタバレのため先の視聴を推奨
シュタインズゲート ゼロのネタバレとあらすじ
無印シュタゲ(アニメだと23話)では、
- 誤って紅莉栖を刺殺してしまい、心が折れた岡部
- を、まゆしぃが平手打ちで勇気付け
- 未来の岡部からビデオが届いていて
- シュタインズゲート世界線を目指す為にもう一度過去に飛ぶ
という展開ですが、今回の「ゼロ」はこの②から先が起きず、紅莉栖の救出を諦めた岡部のその後の話です。
シュタインズゲート世界線を目指さず、β世界線に留まることを選んだ岡部がそのまま成長すると③のビデオに出てきた大人岡部になるのは無印でも言及されていますが、その執念に至る過程が「1つの事件」を通して描かれる作品になっています。
「結末が分かっている物語」の熱いポイント
事前情報で「紅莉栖を救えなかったβ世界線の話」と銘打っている以上、その結末が「映像を送ってくる未来の岡部」であることはもう、誰もが試聴前から予測して見ていたのではないでしょうか。
結果が分かっている物語でどれだけ見る側の心を動かせるのか。正直、少し懐疑的に思っていたのですが、その予想は見事に裏切られる結果となりました。
そう思った理由、個人的に大きく心が揺さぶられたポイントを共有したいと思います。
紅莉栖の安心感
「ゼロ」ではストーリーを通して紅莉栖が話の中心であるものの、紅莉栖本人はほとんど出てきません。
紅莉栖の生き写しAIであるアマデウスがずっと出ているので「いつも通り紅莉栖がいるような感じだった」という声も目にしますが、一度だけ生身の紅莉栖が出てくる場面を見た時は、やはり”本物”ならではの安心感が押し寄せます。
映画の冒頭からずっと不在だったドラえもんがようやく出てきたような、半端ない安心感と頼もしさがありました。実際、すぐにタイムリープマシンを出してくる辺りマジもんのドラえもんだと言えるでしょう。
無印を知っているからこその安心感は、続編である「ゼロ」でしか楽しめない感情なのだと思います。
鳳凰院凶真の復活
無印の頃は「面倒な要素」の象徴として演出されていた岡部の中二病。
それが枯れ果てておじいちゃんみたいになっている岡部がデフォルトの「ゼロ」において、これほど恋しいものになるとは思ってもいませんでした。
「ゼロ」の岡部は全く冗談とか言わないので、無印を知っているユーザーほど、その変わりように寂しさを覚えてしまいます。
寂しさをそのままに進んでいくストーリー。その最も盛り上がるタイミングで復活する、見慣れた白衣と鳳凰院凶真。
それは紛れもないヒーローの帰還であり、帰ってきたウルトラマンだったのです。
事実、その後の岡部は全てをひっくり返していきます。数年ぶりにゲーム限定版特典の白衣とスマホを探しました。
未来からのメッセージを受け取っていたのは岡部だけではなかった
個人的に一番感動したのがココです。
「ゼロ」終盤で明かされるのが、無印23話で岡部にビンタしたまゆしぃが実は「選択を間違えた未来のまゆしぃからメッセージを受け取っていた」という衝撃の事実なのです。
「ゼロ」の世界線のまゆしぃはこのタイミングでビンタせず、逆に庇うことで岡部の心を守りますが、その結果としていつまでも後悔が消えない岡部の姿に悲しみを覚えます。
それをやり直すため、「ゼロ」のラストで往路分の燃料しかないタイムマシンに自ら乗り込み、ビンタしなかったあの日の自分にあえてオカリンを励ますように伝えていたのです。
無印しかやっていない、観ていないと最初からまゆしぃが岡部を鼓舞しているように見えますが、その裏には「大切な人を厳しく律する葛藤」が隠れていたというのです。
β世界線の失敗は2人分あり、それらがあったからこそシュタインズゲート世界線に到達できた……という事実。もう言葉もありません。
話をちゃんと畳む
「ゼロ」の終盤辺りを見ていて、まゆしぃと鈴羽がもう戻ってこれないタイムマシンで過去に向かうとなった時、「シュタインズゲート世界線のために2人が犠牲になってるやんけ!」と心の中でツッコミを入れる自分がいました。
そこで100点満点だった「ゼロ」への気持ちが90点くらいに下がったのですが、そこは千代丸。そういう違和感を蔑ろにはしませんでした。
話は進んで2025年。過去の自分へ映像を送った岡部はその足で、完成したばかりのタイムマシンに乗って未知の時代へ飛ばされたまゆしぃと鈴羽を探しに行くのです。
「Oh…」とため息をついたのもつかの間、およそ人が生きられないような環境の時代に飛ばされていたまゆしぃと鈴羽が諦めた顔をしたところに、突如現れた光の中から岡部がポケットに両手を突っ込んで、笑いながら歩いてくるのです。
「U・S・A!!U・S・A!!」
僕の心は完全にアメリカナイズされ、その夜は興奮でよく眠れませんでした。
完璧な後付け
冒頭でも書きましたが、この作品の良さは「完璧すぎる後付けである」ことにあります。
特に実はまゆしぃも一度選択を失敗しており、それを後悔したから過去に戻ってビンタを促していたという事実。なんと心が震える設定なのでしょうか。
メタ的に言えば、無印を作っていた時にはこの設定は絶対に考えていなかったはずです。つまり、完全な後付け設定なのです。
一般的に後付け設定とは「都合のいいように足された蛇足」みたいなネガティブなイメージで形容されることが多いですが、ことこの「ゼロ」に限っては「最高の補足」であると言えるでしょう。
月並みな表現ですが、付け足すことで作品に奥行きが出るような補足はなかなか出来ることではありません。
ゼロのストーリーとその役割に脱帽し、改めてシュタゲ自体の完成度に脱帽し、それを可能にした志倉千代丸の手腕に脱帽してそろそろハゲ散らかしそうですが、また当分、再燃したシュタゲ熱は冷めそうにありません。
とりあえず原作をまた1周するところから。セーブデータは今度こそ、こまめに取るのを忘れないようにするつもりです。
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