「デュエルディスクのレビュー」。
もう字面からヤバいです。
自分を童実野町の住人だと思い込んでいるブロガーが書いた怖い文章にしか見えません。
今にもTwitterで不名誉な方向の話題になりそうですが、しかしコレが現実の話なのですからどうしようもありません。
去る2019年3月に完全受注生産で予約受付をしていた「PROPLICA デュエルディスク」が先日届き、信じられないくらいハシャいで落ち着いたのでレビューしてみたい、というのが今回の記事なのです。
子供の頃の夢が叶う、という事が20代も後半になってもこれほど胸を高鳴らせるものなのかと、他でもない僕自身が1番ビックリしています。
「PROPLICA デュエルディスク」とは
カードの生産が「お金を擦ってるようなもの」と評されるほどの世界的人気を誇るカードバトルマンガ、「遊☆戯☆王」。
もはや説明不要ですが、その作中に出てくるガジェット「デュエルディスク」を、大人向けに劇中小道具を再現して販売するブランド「PROPLICA(バンダイ)」が受注生産で販売したのがコレです。
デュエルディスクは今までも何度か商品化されていますが、コレはアニメ版「バトルシティ編」で登場したものを基にした、最新進化版に位置付けられます。
その再現度の高さと心躍る仕様(後述)はまさしく子供の頃に夢見ていた”あの”デュエルディスクそのもので、製品概要を見た数分後には注文が完了していました。
僕のデュエルレベルが5未満だったのか送料込みで22,000円ほど請求されましたが、そんな重めの金銭的ダメージさえほとんど気になりませんでした。
幼少期、コミックス片手にダンボールで自作しては母親にデカい可燃ゴミとして捨てられることを繰り返していた、あのデュエルディスクが手に入る。
お恥ずかしながらその時はもう、その事以外考えられなくなっていたのです。
十数年越しの再会
逸る気持ちを抑えて注文したものの、実際に手元に届くのは半年以上も先ということで、日常生活に押されてほとんど頭から消えかかっていた頃。
自動翻訳みたいな印字と共に配達されて来ました。
「配慮」の2文字が頭をかすめますが、それどころではないので開封します。
全長74cmの圧倒的空間占有率に座る場所も追われてしまいましたが、その質量以上の存在感を感じてやまないのはやはり、パッケージに頑張って収まっている海馬が大胆に画面を横断しているためでしょう。
ちなみに後ろはこうなっています。
えらく時代錯誤なデザインだなと思ったら、原作で出て来たパッケージを再現しているんだそうです。よく見ると海馬コーポレーションのロゴが入ってますね。
やはりファングッズとしてのクオリティを意識して大切に作られているんだな、と嬉しくなりました。
その計らいに気付かなかった僕が言うのもアレですが。
せっかくなのでデザインを汚さないようテープを慎重に剥がし、開封していきます。
そしてついに、実に十数年ぶりに再会したデュエルディスクがこちらです。
思わず腹筋に力が入り、「おほぅ」みたいな変な声が出ました。
まさにあの頃、ダンボールで作ろうとしていた理想のデュエルディスクがそこにあったのです。
名実ともに偽物である自作のダンボールディスクと比べたらそりゃもちろん完成度が高いに決まっているのですが、それでも原作に限りなく近い再現度に「コレが本物か……」としばらく見つめてしまいました。デュエルディスク側も困ったでしょう。
そこからはもう、着けて外してドローして召喚してと大騒ぎだったのですが、一通り堪能した結果をレビューとして整理してみたいと思います。
レビュー:2つの再現で蘇る遊☆戯☆王の世界
ほぼ完璧な立体化による”実物”の再現
無印直撃世代にとってのデュエルディスクと言えばやはりバトルシティ編で登場したこの形ですが、色味や形はもちろん、ボタン配置や細かい装飾に至るまでが寸分違わず立体化されています。
マンガやアニメという”別の世界”でしか見たことのないアイテムが、現実として目の前にあるというこの感覚。いよいよ自分が東京都民なのか童実野町民なのか区別がつかなくなってくるようです。
もちろん見かけだけではなく、実際にカードをセットしてデュエルに勤しむことも可能になっています。
- デッキホルダー(40枚)
- 墓地
- モンスターフィールド(5枚)
- 魔法、罠カードゾーン(5枚)
- フィールド魔法カードゾーン
- エクストラデッキ、除外カード入れ
現行のOCGには詳しくありませんが、リリースではなく生贄と呼ばれていた頃の初期のエキスパートルールでのデュエルを想定した作りになっている印象です。
カードは「市販の約『59mm×86mm』サイズのカード、それにスリーブを装着した最大約『63mm×90mm』サイズに対応」とのこと。
かなり計算して作られているようで、しっかりセットすればかなり傾けても落ちません。
とはいえ、海馬のようにブンブン振り回せばすっ飛んで行ってレアカードに傷がつくことになります。注意が必要です。
音と光の演出による、作中のバトルの再現
実際にカードがセットできると言っても、ただ置いて終わりではありません。
このデュエルディスクは随所に仕込まれたギミックの数々により、あたかもソリッドビジョンのデュエルが展開されているかのような演出を施すことができるのです。
以下は、ハシャぐ成人男性その演出がもたらす効果の凄まじさを検証した動画です。
めっちゃうるさい買い物した pic.twitter.com/SyN9pVIZ1g
— 1176@DTMブログ (@1176fire) November 17, 2019
部屋で独り、いえ1人のはずなのに、そこは間違いなくカードの飛び交うデュエルの場だったのです。
カードをセットすれば聴き馴染んだ効果音が鳴り、モンスターが召喚されステータスが表示される音がする。枠の光り方もアニメで見たそのままです。
興奮を司る神経に密接に刷り込まれたBGMも、否応無しにテンションを引き上げます。
「熱き決闘者たち」だけでなく、某ニコニコで流行った「クリティウスの牙」などの人気曲4曲でいつでも対戦相手を威嚇できるのです。
そして極め付けはライフカウンター。
ピピピピ…という”あの”増減の音と共に目まぐるしく明滅するカウンターを見ていたら、「待って。むり(天使)」とあえなく女性ムーヴが出てしまいました。
しかも細かいことに、ただ減る時とライフがゼロになる時で音が違うという徹底ぶり。
この感情が「尊い」というものなのでしょうか。
また、ライフの数値によって変化する海馬のボイスも没入感に貢献します。
あえて遊戯でないのは事務所の関係でしょうか。
自分で「召喚!」「リバースカードオープン!」などと叫ぶのが恥ずかしくても、代わりに海馬が力の限り叫んでくれるのです。
なんか凄い長尺のセリフもあるので、初対面の人とのデュエルでも代わりにコミュニケーションを取ってくれることでしょう。
開封して触っていたら突然「怒りの臨界点を超えたオレのデッキが応えてやる!!」と結構な大音量で叫び出して慌てて窓を閉めたりもしましたが、やはり有るのと無いのとでは全く違います。
レビュー:立ちはだかる現実の壁
重さ
作中では装着したまま牛丼を食べたりしていましたが、このデュエルディスクは結構な重量があり、長時間の装着は厳しいと言わざるを得ません。
本体そのものが重いというより、腕からハミ出る板部分(モンスターフィールド)を支え続ける必要があるので疲れてしまう、と言った方が正確です。
作中と同じ取り回しを実現するなら板部分を円形のデッキ部分より軽くする必要があると思いますが、光らせたりする都合上、それは厳しかったようです。
この重量バランスを解決するためにグリップが追加されていますが、個人的には仕方ないと感じます。
それをとやかく言ってしまえば原作では板部分が収納できるようにもなっているわけで、あくまで現段階での技術で最高の再現度を実現した、というのが素晴らしいことなのだと思います。
でもやっぱり、ソリッドビジョンシステムだけはいつか実現して欲しいところ。
デザイン上の不都合
魔法・罠カードを差し込むスロットは5つありますが、デッキ部分との接合部近くの2つは出し入れがかなり不自由だったりします。
不自由を通り越して無理を通しているようにしか見えませんが、これは元のデザインがこうである以上仕方ないのかもしれません。ちなみに説明書には注意事項として明記されています。
こういったデザイン上の不都合は他にもあり、それはやはりこのデュエルディスクはあくまでファングッズで、実際に着用してデュエルしまくるのには向かないことを表しているように思えます。
- 板部分がデカいので行動が制限される。デュエルの合間に水を飲んだりすることもままならない。
- カードをセットしようと本体を身体に近づけると、意図せずボタンが押されてしまうことがある。
- 左手は常にグリップを握っていなければならないので、手札を持てない。
せっかくですからBGMや効果音を出しながらデュエルできればとても盛り上がると思うのですが、それをやるには
- お互いに持ち寄ったデュエルディスクを付属のスタンドで立て
- 向かい合って相手にカードを示しながらセットする
みたいな感じが現実的な方法になってしまいます。
カードショップとかでそういう光景を見た時、どんな顔をすべきか迷いますね。
ファングッズの宿命
アイテムとしての再現度はもちろんのこと、個人的には演出の効果が凄まじ過ぎました。
アニメの中の登場人物がカードをセットしたら召喚音が鳴る。これは普通の体験ですが、
自分の行動(カードのセットなど)によって「アニメで聴いた”あの音”」がする。
この体験によって、頭ではあり得ないと理解している上でなお、心が「あの世界に行けるかもしれない」と反応してしまうことで、抗いようのないワクワク感が発生するのかも……と他人事のように考えたりもしました。
しかしこのアイテムが「あの日の夢の実現」に特化した製品である以上、そこに価値が見出せない人にとっては(2万という値段も相まって)、だいぶキツく感じられるであろうことは事実だと思います。奥さんに黙って買ったりしたら夜明けまで怒られること請け合いです。
ただ不思議なのは、昔ゲーセンで意地になって五千円くらいかけて取った千年パズルのキーホルダーは死ぬほど後悔しているのですが、このデュエルディスクについては全くそういう感情が起こらないのです。
その違いは多分、贅沢な仕様だからというだけではなく、「小さい頃の夢が叶う」という得難い経験をさせてもらったからかもしれないな、と少し思いました。