「DJ」が1つの趣味や職業として知られるようになった昨今。巷では折に触れて、人の海を前に両手を広げて恍惚としている外国人の映像を見かけるようになりました。
中でも海外のトップDJともなれば小さい国くらいの収入があることでも知られ、姫路城のようにライトアップされたプールで美女と戯れる華々しいMVに憧れてターンテーブルをポチった人も少なくないでしょう。
しかし趣味であれ仕事であれ、DJを始めるには機材購入という初期投資がつきものです。PCは手持ちがあるとしても、ターンテーブル(コントローラー)とヘッドホンは最低限必要になってきます。
予算が限られている状況では多くの場合、「ヘッドホンは安く上げてプレイに直結するターンテーブルに資金を割り振りたい」となると思いますが、とはいえゲーセンで取ったヘッドホンや100均のイヤホンではどうも心許ないのもまた事実。
そんな事情を察してかは分かりませんが、リーズナブルな価格を保ちつつ「DJ向け」に特化しているヘッドホンがありました。今回レビューするOneOdio社の「pro-50」がそれで、”DJファースト”のその造りの一端をご紹介したいと思います。
なお、今回はサンプルをご提供頂いてのレビューとなりますが、僕の実直な感想を表現してOKとのことですので、恐れながらも率直に書かせて頂こうと思います。
OneOdio社とpro-50
中国に本拠を置くOneOdio社は比較的最近、日本に進出したヘッドホンメーカーです。販路は公式の通販とAmazonストアを持ち、各種SNSでは国内のプロモーションに力を入れているのが窺えます。
公式サイトは今のところ単純な機械翻訳になっていますが、今後リニューアルを予定されているそうです。
そして肝心の製品ラインナップは記事執筆時点で
- Proシリーズ(DJ、スタジオ向けヘッドホン)
- Fusionシリーズ(ワイヤレスヘッドホン)
- Gameシリーズ(ゲーミングヘッドホン)
- ANCシリーズ(ノイズキャンセイリングヘッドホン)
の4系統あり、今回レビューするpro-50はProシリーズの最上位版に位置するモデルになります。
Proシリーズはコンセプトとして「DJ向け」を標榜しているのですが、その看板に偽りはなく、後述のように様々な角度からDJに特化した仕様を備えているのが特徴です。もちろん”お手頃な価格帯”も忘れません。
実物と仕様
写真では伝わりにくいですが、何かやたら手触りの良い外箱でした。
内容物は以下の通りです。
- ヘッドホン本体
- 収納ポーチ
- 説明書(日本語あり)
- 会員登録の案内カード
- ヘッドホンケーブル2本(3.5mm-3.5mm (1.2m)×1、3.5mm-6.35mm(2〜3m) ×1)
ヘッドホン本体の外観。イラストの参考資料になるレベルで王道なフォルムです。
数値上のスペックに変わったところはないかと思いきや、目を引く「ハイレゾ対応」の部分。やたら触り心地の良い箱といい、実売5,000円前後であることをつい忘れそうになります。
形式 | 密閉型 |
---|---|
再生周波数 | 20 – 40,000Hz(ハイレゾ対応) |
インピーダンス | 32Ω |
最大入力 | 1600mW |
感度 | 118±3dB |
付属の説明書には日本語表記があります。かなり大胆な主語述語の使い方が出てきたりもしますが、意味は普通に読み取れるので使用上の問題は特にありません。
専用の収納ポーチはヘッドホン本体とケーブル2本を入れてちょうどの大きさ。日本人に馴染み深い巾着式です。
そして内容物に含まれていた謎のカードですが、これは公式サイトへの会員登録を促す内容で、その特典として
・2年間の保証
・以下の3つから選択した1つ
- OneOdio社の商品1つ
- 収納ポーチ
- 次回購入時に使用できる40%オフクーポン(Amazon)
を受けることができます。「1つ買ったらもう1個プレゼント!」というキャンペーンを見たのはドミノピザ以来初めてです。
使用感レビュー:推せるところ
DJの立場に立った構造
堂々と「DJ向け」を謳っているだけあり、DJで使用することを徹底的に意識した造りになっているのが印象的でした。
まず分かりやすいのがスピーカー部の可動域。ヘッドバンドの付け根で約90°、アーチ状の部分が約180°回転するようになっていて、これはDJがよくやる片耳だけ聴くアレがしやすい設計であることを意味します。
さらにイヤーパッドがかなり厚く、また耳をすっぽり覆う形になっていて密閉性が高いため、イベントの大音量の中でも次曲を適切にモニタリングできる造りなのも特筆すべきでしょう。
ちなみにイヤーパッドもヘッドバンドもクッションが大分柔らかく、長時間着けていても疲れにくくて良いなと思いました。僕はメガネ常用者ですが、その上から付けていても耳が痛くならなかったほど。
そして何より配慮を感じられたのが、ケーブルが着脱式であること。
DJ用途ではワイヤレスヘッドホンだと万一の混線や充電切れの恐れがあるため、有線であることにはそもそも必然性があります。
その上で着脱式であることで、
- ケーブルをどこかに引っ掛けても抜けてくれるので、断線しにくい
- 万が一断線した時に備え、スペアのケーブルを予め用意しておける
という断線リスク対策が可能になっているのです。
フロアを沸かせているまさにその最中にヘッドホンが断線、曲を止めざるをえなくなって白けた視線がこちらを刺す……なんて状況は、考えただけで実家に戻りたくなります。
機材に不意のトラブルは付き物ですから、いざという時の保険は常に持っておきたいところ。それが別のヘッドホンであるより↓のようなスペアケーブルである方が荷物が少なく、また安上がりなのは間違いないでしょう。
荷物と言えばpro-50は折り畳みが可能で、持ち運びがしやすいのも地味に嬉しいポイントです。
ノートPCやアナログ盤、場合によってはターンテーブルさえバッグに詰めて出かけることもあるDJにとって、軽くて小さいことが歓迎されないはずがありません。
2種類のケーブルを併用可能
上でも少し示しましたが、pro-50は3.5mmと6.35mmの2種類のジャックに対応しており、それに即した2種類のコードも付属しています。
用途によってケーブルを使い分けることができ、なおかつ変換ジャックを用意する一手間を省略できるというわけです。
3.5mmケーブルは普段使い用として主にスマホ等との接続が想定されていて、そのためか簡易的なリモコンが付いています。
マイクにボタンが1個と清々しいまでのシンプルさゆえに早送りや曲送り等はできず、通話に出たり曲の再生・停止のみが可能です。でもMacbookで使っていた時に長押ししたら何故かSiriが起動しました。
6.35mmのケーブルはターンテーブルやオーディオインターフェイスとの接続用といった体で、一部がカールコードになっている以外は取り立てて特別なところはありません。
低音重視の音質
ココはあくまで個人の主観であることはお断りしておきますが、密閉型なこともあり、低音が気持ち良く鳴ります。キックやベース重視のジャンルに相性が良い辺りはやはりDJ向けと言った感じ。
逆に高音域、特にトップエンドは若干落ちてるように聴こえ、その影響か奥行きの表現は苦手かもと思いました。
これはあくまでもDJで扱われやすいジャンルに寄せたチューニングという事なのかもしれません。その意味ではコンセプトが一貫しているとも言えますね。
使用感レビュー:少し思うところ
ちょっと付けづらい
DJ向けの構造が裏目に出た形で、雑に付けようとするとスピーカー部が回転して上手く装着できないことがありました。
もちろん落ち着いて付ければなんてことないのですが、頻繁に付けたり外したりする環境の場合、固定型のヘッドホンと比べると取り回しが少し落ちる印象はあります。
音質はリスニング向き
公式には「楽曲制作のミキシングにも」とありますが、上で書いた通り音のバランスが低音寄りなので、音源制作のモニター用としてはベストとは言えないように思います。
仮にpro-50でミキシングを完結した場合、他の環境で聴くと低音が弱い音源になってしまうように思うので、その用途ならもっとバランスがフラットなモデルを選択した方が良いでしょう。
多分にリスニング用としての意味合いが強い製品です。もちろんDJとしての用途であれば問題ではないので、どこまでもDJ向きだなと感じました。
総評:DJ用入門機の良い選択肢
pro-50が対象となるのは
- これからDJを始めるつもりの人
- お手頃な価格で低音の出るヘッドホンが欲しい人
- メインのヘッドホンの他にサブのヘッドホンが欲しい人
この辺りの人々かと思います。
僕は普段、DJではなく音源を作る側なのでpro-50のコンセプトは新鮮でしたが、それでもしっかりメインの顧客のことを考えて作られている製品なのは伝わってきました。
特にDJという形で初めて音楽に触れるというような人にとって、数あるヘッドホンから1つを選ぶ時にあれこれ目移りしてしまうのは自然なことと言えます。
その中であなたの方を向いている製品が少なくとも1つ、ここにあるのは確かです。価格は既にリーズナブル、あとはあなたの選択次第と言えるでしょう。