初めて「VR元年」が謳われた2016年、それまでVRとはスマホをはめ込むダンボールか新宿にあるゲーセンのことを意味していた僕にとって、PSVRの衝撃はとにかく凄まじいものでした。
水中なのに呼吸できるのを奇妙に感じるほどの臨場感や、迫り来るサメに思わず身をよじってしまうほどの実在感。青赤の立体メガネとは比べるべくもない圧倒的な体験に、一発で参ってしまったのを覚えています。
しかしその熱も本体の重さが気になり始めると共に徐々に落ち着いていき、最近ではごくたまにスカイリムに出かけるかどうかも怪しくなってきていたところに、人生2度目のVRショックに見舞われたのです。
それは先日発売された「Oculus Quest2」でした。PSVRの時は現実→VRという意味で別世界でしたが、今回はVR→VRなのにそこには別世界、いえ異世界が広がっていたのです。
4年ぶりn回目の「VR元年」。その一部始終をお話ししたいと思います。
Oculus Quest2とは
Oculus社から発売されたVRゴーグル、Oculus Questの第2世代です。
初代Oculus Questの時ですら
- 10万円以上が普通のVRゴーグル業界で、128GBモデルでも6万円強
- ケーブル無しで使用できる
- ケーブルでPCと繋げばPC用のVRゲームもできる
と「俺、何かやっちゃいました?」みたいなスペックを誇り、”初めてのVRならQuest一択”とまで言われるポジションだったわけですが、今回それが全体的にブラッシュアップされ、
- 画質が(スペック上)1.5倍に
- 約100gほど軽量化
- メモリ(処理性能)が4GBから6GBに改良
- なのに256GBモデルで5万円を切る
性能が全て向上した上で値下がりするというトンデモ展開が発表された事で話題になりました。Twitterでは「100000000個注文した」などと大騒ぎになり、僕も思わず食べやすくなって新登場する日本企業との差を考えてしまったほどの衝撃です。
そうして脳裏にAppleストア前のモヒカンおじさんがよぎるや否やすぐさま注文を済ませ、初めて彼女ができた男よろしく部屋を片しながら到着を待つ日々が始まりました。
実物と外観
日本郵政の荷物追跡画面にF5アタックすること数日。
外箱はデカければデカいほど到着した瞬間のワクワク感が上がりますね。落ち着いたら収納場所に困るまでがセット。
中身はこんな感じで収まっていました。
何はともあれ本体。予想よりも落ち着いた色味のホワイトで、マジックテープのバンドを調節して頭にフィットさせる形になっています。
接顔面のスポンジは電子機器をダンボールに収納する時によく使われるやつに似た手触りでした。
レンズは目の間隔に合わせて3段階で調節できるようになっています。あと直射日光と液体洗剤がNGだそうです。
本体向かって左側に電源ボタンと音量調節ボタン、右側にType-C端子とイヤホンジャックが配置。ちなみにスピーカーを装備しているのでイヤホン無しでも使えます。
コントローラー×2。CHEMISTRYみたいな写り方でちょっと笑いました。
左右それぞれにボタン3個とスティック、人差し指と中指で押すトリガーが配されており、これがVR空間上での両手になります。
充電コード、メガネ着用時用のスペーサー、説明書。コードは両端ともType-C端子です。
全体的に未来感丸出しのデザインに、孤独な六畳間でフェスかというほどテンションがブチ上がりました。もしかしたら初代Questから本体色が黒→白になったのも、そういう効果を見込んでのことなのかもしれません。
ひとまず単体で使用してみる
Quest2は前述のとおり単体で動作するので、とりあえずセットアップしてみることにしました。手順は以下の通りです。
- Facebookアカウントを用意する
- スマホアプリを用意し、Quest2と連携する
- 本体を装着、セットアップを行う
Facebookアカウントの用意
Quest2からは使用するのにFacebookアカウントが必須となり、ネットは匿名が基本の日本では発表当時からあまり良くない方向で話題になっていました。
発売前日にはQuest2用にアカウントを作る人が相次いだ為かAIによるアカウントの自動BANが続出し、Twitterトレンドに上がるほどの騒ぎになったのも記憶に新しいところです。
結論から言うと、僕は偽名アカウントを新規作成しQuest2に紐づけていますが何の問題もなく使用できています(記事執筆時点で1週間ほど経過)。
アカウントの設定は
- 偽名かつ英字(Tarou Yamadaみたいな感じ)
- アイコンは実写の写真(マスクした横顔)
- ステータスは誕生日のみ設定
としてあり、その他項目は全てノータッチです。何も保証はできませんが、アカウントを新規作成する場合は参考にしてみてください。
ガチ本名のアカウントを既に持っていたものの、「〇〇さんが今VR空間で美少女になっています!」とか表示されたらと思うと流石に使えませんでした。VRで実名を出す魅力がどうしても分からないのは僕だけでしょうか。
アプリの準備
「Oculus」というドストレートな名前の公式スマホアプリがあるのですが、これがセットアップ時に必要なのでダウンロードします。
Facebookアカウントでログインし、使用するデバイスとしてQuest2を選択。Bluetoothで本体とスマホを繋げられるようになったらOKです。
ちなみにこのアプリ上でVRソフトを購入したり、本体設定をイジったり自分の視界をスマホ画面にミラーリングして他人に見せたりできます。
本体のセットアップ
本体を装着し電源を入れると、自動で初期設定が開始されます。この時点でVR空間が展開されるのでもう結構感動してしまいました。
画面の指示に従うだけで特に難しくないですが、移動スペースの指定があるので始める前に2m×2mの空間だけ確保しておきましょう。
ちなみに↑の画像はスマホにミラーリングした画面のスクショなのでガビガビですが、実際の視界はもっと全然クリアなので安心してください。
使用感レビュー
いともたやすく表示されるえげつない画質
10人いたら12人がまず口にするでしょうが、その画質の綺麗さがいきなり全てを持っていきました。
上でも書いた通り、同じVR空間なのにPSVRとは完全に別の世界であるとしか言いようがないのです。自作アバターと目を合わせるのが若干気まずかったほど。
現実と見違えるような光景、というよりは「3Dポリゴンの立体物がすぐそこに存在する」感覚と書いた方がより正確かもしれません。置いてある机が実物ではなくポリゴンなのは分かるけど、そのポリゴンが現実化しているように見える……という感じ。
ならば将来、実物と区別がつかない程の3Dモデルが普及するようになった時は一体どうなってしまうのでしょう。視覚に限って言えばナーヴギアが少し見えてきているような気さえしてしまいます。
本体性能の水準
画質以外の本体性能についても、やはり技術の進歩を感じずにはいられないものでした。
まず思ったのはヘッドトラッキング、ハンドトラッキングの精度がやたら正確であること。
最初にエリア設定さえちゃんと出来ていれば、プレイ中に視界がどんどんズレていってプレ幽体離脱みたいになる現象などはまず起こりません。
素手をコントローラーとして使えるハンドトラッキングは指一本一本の曲がり具合まで正確に認識し、あまりの感動に10分くらい両手でジャンケンしていました。ただ操作自体はコントローラーの方がやりやすかったので、この辺は””””ロマン””””かなとも思うところ。
次に気がいったのはスピーカーの性能です。音質は普通オブ普通ですがVR用に調整してあるのか、イヤホン無しでも凄く臨場感のある音場が作られることにビビりました。
ちゃんと視界に合わせて定位(音のする方向)が変わるのは勿論、距離感の再現が上手くいっているようで「スピーカーから鳴ってる感」が殆どなく、ちゃんとその方向から音がしているように聴こえます。
一応長くDTMをやっている身でも感心したため、ここには相当の技術を感じます。あとPSVRはイヤホン必須だったのでコードレスになった感動もデカいかもしれません。
そして上でも書いたレンズの幅調整機能。
PSVRではコンタクトがズレてる時みたいなピンボケがちょくちょくあり、その度に位置を手直しするのが没入の妨げになっている印象がありました。
その点、Quest2は最初にしっかり合わせれば基本的にズレることなく使用できます。ちなみに僕の場合は最大の「3」がピッタリでした。
装着感について
VRゴーグルのスペックで最も注目される「重さ」ですが、個人的にはこんなん羽じゃんって感じでした。PSVRで鍛えた首にはいささか物足りなさすら覚えます。
すみませんちょっと大げさ過ぎましたが、それでも2時間くらい付けてても平気だったのは事実です。プラネタリウムなんかを寝VRしていてもストレスは殆ど感じません。
どちらかというと重さより顔のスポンジに触れてる部分が徐々に疲れてくる方が気になりました。多分に個人的な感覚ですし単純に慣れの問題だとは思うものの、↓みたいなのを用意すべきか迷っています。
また、眼鏡をしたまま装着できるのも嬉しいポイントでした。意外にもスペーサー無しでも問題なく使用でき、その方が視野も広くなるみたいなのでそのままにしてあります。
あと鼻の上のスペースから外界の光が入る、というVRゴーグル共通の問題についてはQuest2も例外ではありませんでした。
それを防ぎたい場合は別売りのフィットパックが必要で、それなら格段に着脱しやすくなると噂のEliteストラップもいったろかな、という模範的な消費者思考に気付いた時は自分が恐ろしくなります。
Oculus Linkと無線VR環境
Quest2は↓のようなUSB3.0かつType-CのケーブルでPCと接続することで、PCVR用に作られたVRソフトも使用することが可能(Oculus Link)になります。
僕の場合は、
- 5mあるケーブルは公式しかなかった
- 相性問題を心配したくなかった
- サードパーティ製に比べて柔らかいので動き回りやすい
- 光ファイバーなので繋ぎながら使っても充電が減らない
などの理由で公式のたっかい純正ケーブルを買いました。ちなみに付属の充電用Type-Cケーブルは、充電専用でOculus linkには使用できないので注意してください。
そして有線接続が成功したら一定の操作をするとWifi経由の無線接続も可能になるとのことだったので、最終的にはそこを目指して設定していきました。高い純正ケーブルを買った意味は深く考えないようにしています。
詳細な手順はネットにたくさん記事があるので割愛しますが、割と単純なのでトラブルさえなければスムーズに終わると思います。僕はトラブルが起きたので2日かかりました。
無線PCVR環境、最強説
色々乗り越えてようやく辿り着いた無線PCVR環境は、一言で言って最強でした。
- GTX1070
- メモリ16GB
- i7-7700K
という現在では微妙な構成にも関わらず、ほぼ遅延なくスムーズな使用が可能。例えばVRChatでは最高の90Hzに張り付くレベルで、それでいてケーブルレスなのですから隙も弱点もあろうはずがないのです。
唯一、何かアプリなどをDLしている最中だけは重くなりました。でも古いルーターなので買い替えればここもなんとかできるかも。
非現実的な重さなし、ケーブルなし、イヤホンなし、場合によってはコントローラーもなし。これではいつヒルナンデスに目を付けられるか分かったものではありません。
VRもある意味3次元
「目の前に迫る臨場感」とか「息遣いが聴こえるよう」みたいな表現はPSVRの時はちょっと誇大気味でしたが、Quest2ではまさにそれ、という感じになりました。
価格、画質、そして娯楽。全て三拍子揃っており、友達に「一緒にやろうよ」と勧められるという意味で、今度こそVR元年が来たと言えるなと思いました。
もちろん全く馴染みがない人にとって5万は結構な値段ですが、スマホを新しくするよりずっと革新的な体験ができるのは間違いありません。人によってはそこから新たな生活が始まることもあるでしょう。
体験という面から見ればVRは決して架空の世界ではなく、現実世界を延長してくれるものと言えます。アナタも是非Quest2で、猫耳のある現実に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。